一般的に着物は苦しいもの。
お紐はしっかり締めないと着崩れをしてしまうと、多くの方が思い込んでいます。
そのような思い込みから、本当は苦しいのに着付けとはこんなものだと我慢をされたり、体調を崩される方が存在するということも事実です。
私の理想は、お紐をきつく結ばなくても、いつもと変わらない呼吸ができる着心地の良いお着付けです。
その原点となったのがベルトでした。
私は普段、お紐や伊達締めを使わずにベルトのみで着物を着ています。
ベルトなので締め付け感や苦しさはなく、普段通りの呼吸ができています。
この呼吸ができる着心地の良いお着付けを、お紐や伊達締めでも再現したいと長い間模索し続けていました。
そして10年が過ぎた頃、ようやく辿りついたのが『美しい血流着付け』です。
この『美しい血流着付け』が誕生したのは美容室でした。
それまでの補正を見直したことで、偶然にもそこに余白が生まれ、呼吸ができるお着付けが出来上がったのです。
この余白がどの部分にあるかと言うと、ちょうど帯の真ん中あたりになります。
ここはほとんどの方が当たり前のようにタオルなどの補正を入れるところです。
あえてそこに補正を入れていません。
そして、その上下に必要な補正を入れることで、必然的に中心部分に空洞が生まれ、そこが空気の通り道となります。
何も入っていないから息を吸った時に、お腹を膨らませることができる。中の内臓も自由に動く。
目の前の美味しい食事をいつもと同じように味わうことができるのです。
私はこれを「余白」と呼んでいます。
もしも、寸胴に補正をしてしまうと、後からやってくる小物たちの厚みの分、お客様を太らせてしまいます。
そう見せないようにギュウギュウに締め付けると、呼吸が浅くなってしまいます。
苦しいからとお紐を緩めると、本来そこにいなくてもいい補正たちと小物たちが暴れ出します。
これが着崩れなのです。
普段と変わらない血流でいられるこの理論について着付師さんにお話ししたら、「確かに理にかなっているけれど、真似できない!」「いまさら手を変えられない!」「やっぱり締めないと着崩れが怖い!」と言われました。
私は「絶対に苦しいお着付けはしない」という自分との約束、その信念があったから、当たり前の着付けの常識を疑い、自分の技術を見直し、ここにたどり着くことができたのだと思います。
余白が生み出す美しく心地のよい着付け。
それが『美しい血流着付け』です。
この『美しい血流着付け』をするようになってから、明らかにお客様の反応が変わりました。
それまで以上にお客様のお喜びの声をたくさんいただいて今に至っています。